ご来場頂いた皆さま、ありがとうございました。
幾多の困難(調律の手配がされていなかったり、音響スタッフの不在によってサウンド・チェックに手間取りリハーサルがほとんど出来なかったり、最終的に心地よく演奏できるモニター環境が得られなかったり、などなど‥)と戦いながらの演奏となった訳ですが、それにしては、それなりに、心を震わせるようなピアノが弾けたのではないか?と自負している次第です。
なんといっても、鳥山君のうたごころ溢れる繊細なプレイに触発されたからに他なりませんが、彼の弾くメロディを適切に包むべくハーモニーを奏でる、という行為は、演奏というよりも、むしろ、祈り、と呼んだ方がふさわしいような気がします。立場を入れ替えて私のメロディに寄り添ってくれる彼のプレイもまた同様で、結局のところ、二人して音楽の捧げものを天に響かせているような(ちょいとニュー・エイジがかった表現で誤解を招きそうですが‥)感覚でした。
32年前の秋に始めて共に音を出した時の驚きと歓びは今も変わることなく、近年共演の機会が増えるに従ってますます大きくなって、私にとって日々の精進の活力となっています。
「ギタリストとピアニストのコンビと言えば、誰と誰を思い浮かべる?」という質問を音楽ファンにしたとして、「まず、ジム・ホールとビル・エヴァンスでしょう?それから、パット・メセニーとライル・メイズ、あと、鳥山雄司と和泉宏隆も外せないね」‥いつの日にかそんな答えが返ってくることを目指して‥。
昨夜、彼は3本のギター〔オベーション(ナイロン弦)、タコマ(スチール弦)、サドウスキー(ジャズ・ギター)〕を携えて臨んでくれたのですが、それぞれの楽器のめくるめくような多彩な音色に陶酔したのは私のみならず聴衆の皆さんも同様でしょう。惜しくも参加されなかった方々は、次なる機会をお聴き逃しなきよう!
text by H. Izumi